娘が「腐女子」だと知っても、二人の生活で何が変わるものでもなかった。
それまでと変わらない毎日。

ただ娘としては僕にカミングアウトしたことで、隠れてこそこそと漫画(おそらくBLと呼ばれる類のモノ)を描いたりする必要がなくなり、僕も前でも自分の描いている作品のことや自分が参加している活動のこともよく話してくれるようになった。

自分たちで作った漫画を印刷製本し、販売するイベントが開催されるらしく、そのイベントに友人と一緒に出店(参戦とか言っていたっけ)するために早く原稿を描き上げなければならないとか。
いわゆる同人活動のことだった。

「さーくるかっと」「しま」「どーじん」「うりこ」「こみけ」「おんりーいべんと」

娘の話しの中には、聞きなれない単語や用語が出てきてよくわからない。
でも娘の描いている漫画が原作は名探偵コナンの二次創作と呼ばれるモノで、名探偵コナンで出てくるサブキャラクターを題材にしたモノだということは何となくわかった。

「ふーん」



あまり興味は湧かなかったが、普段はあまり話しをしない娘がいろいろと教えてくれるので、わかったふりをしながら聞いていた。

まあ、いいや。
同人誌がろうが、二次創作だろうが、娘が「腐女子」と呼ばれる存在だろうが、それを楽しんでやっているんなら、それもよし。
別に反対する気もないし、逆に好きならもっと楽しめばいいさと思った。

食事が終わって、自分の部屋で寛いでいると、

「これ読んでみなよ」

と、娘から名探偵コナンの1巻と2巻を渡された。
仕方ないな。
彼女の趣味を理解するために読んでおこう。
そう思いながら、ベッドに寝転がって名探偵コナンを読んでいたが、1巻の途中で寝入ってしまっていた。

娘の趣味を理解するにはまだ道は遠い。